研究課題
1)ICP支援マグネトロンスパッタリング法という斬新なエネルギー支援物理蒸着法により、Ti_<80>Si_<20>N薄膜を基板温度200℃以下で作成することができた。ICP支援により非晶質のTi_<80>Si_<20>Nは結晶化した。そして完全なTiN(200)面優先配向になった。熱力学的に安定で表面エネルギーの低いTiN(200)面が優先的に成長したのは、低いエネルギーで高い密度のイオンにより、吸着原子の表面移動度が増加して相分離が起こったからであると考えられた。さらにXRDとFESEMとXPSとHRTEMの分析より、膜は40GPa以上の硬度を有すると共に、nc-TiN/a-Si_3N_4ナノコンポジット薄膜の構造を形成していることが明らかになった。2)薄膜の持つ超硬質は、しばしば内部応力が主たる原因になるが、本研究で得られた薄膜の内部応力は数GPaで小さく、その超硬質発現は内部応力によるものではなく、特異なナノコンポジット効果に基づくものであることが確認された。即ち高密度で低エネルギーのイオン照射の効果により、膜の微細構造において相分離が起こり、結晶粒界におけるa-Si_3N_4の生成とTiN結晶の成長が抑制された。そしてこの構造は粒界の結合を強固にして粒界の滑りを抑制するので、膜の硬度が上昇したと推測された。3)さらに新規のナノコンポジット酸化物薄膜としてTiON系を対象として、同じ方法でTiO2合成を行ったところ、ICP支援によりアナターゼからルチルにいたる構造制御が可能な酸化物を合成できることがわかった。今後はこれに加えてミリ波という斬新なエネルギー支援を施して酸化物ナノコンポジット薄膜の研究を行う。4)誘導結合型プラスマ(ICP)という斬新なエネルギー支援により、内部応力が小さくかつ超硬質のナノコンポジット膜を低い成膜温度で合成することができた。さらに得られた膜の特性評価により超硬質発現の機構を明らかにすることができた。またこの手法は酸化物薄膜の場合にも有効に適用できることが見出された。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Journal of Vacuum Science and Technology, A25
ページ: 1524-1528
Thin Solid Films (In press)
Key Engineering Materials 373-374
ページ: 172-175