研究概要 |
近年インドにおいて強風時に給水塔が倒壊する事故が発生した。この強風災害は構造物と流体との相互作用を適切に評価することの必要性を示している。給水塔は頂部の質量および受風面積が大きく,スレンダーな円筒形という特徴を有する。さらに円筒背後に形成されるカルマン渦により風直交方向の振動が励起され静止時の空気力からでは予測できない大きな振動に発展する可能性もある。この幾何学的,構造的および空気力学的特徴を考慮して,当時の被害発生の原因および今後の耐風設計への反映のための研究を実施した。今年度は,11月末に研究分担者が来日し,日が浅いこともあり,この4ヶ月間は,対象とする構造物について,空力特性のための風洞実験の計画と構造物のモデル化を実施した。 ・インドにおける給水塔被害状況の資料を集め,整理した。 ・円筒形構造物は,渦励振による風直角方向振動など特徴ある空気力学特性を示すため,空気力の正確な把握が必要であり,適切な実験計画を立てるため,過去に行われた実験結果をとりまとめた。特に円筒形のような曲面を有する非流線形物体は境界層の剥離が生じる位置がレイノルズ数に大きく依存し,実験では容易には実スケールの現象を再現できないため,表面粗度要素の資料等を検討した。 ・風洞実験は,東京工芸大学風工学研究センターが保有する大型境界層風洞を用いて行い,多点同時風圧計測システムにより,模型表面に発生する風圧力を記録する準備を行った。チュービングの補正等を予め実施した。 ・構造物のモデル化のため,構造諸元の見積として,対象とする給水塔の設計図書から,給水塔の質量分布,剛性を評価,個有値解析により,給水塔の振動モード,固有振動数を明らかにした。また,既往の減衰定数に関するデータベースから,減衰定数の適切な値を検討した。 ・風圧実験に用いる模型の製作を行った。
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