研究概要 |
近年インドにおいて強風時に給水塔が倒壊する事故が発生している。給水塔は頂部の質量および受風面積が大きく,スレンダーな円筒形という特徴を有する。さらに円筒背後に形成されるカルマン渦により風直交方向の振動が励起され静止時の空気力からでは予測できない大きな振動に発展する可能性もある。この幾何学的,構造的および空気力学的特徴を考慮して,当時の被害発生の原因および今後の耐風設計への反映のための研究をすることが目的である。昨年度の実験準備と予備的検討に引き続き,本年度は,円錐状貯水槽タワーに作用する揚力,渦放出周波数揚力の相関長,揚力のルートコヒーレンスなどを詳細に検討するため,東京工芸大学所有の境界層風洞(断面2.2m幅×1.8m高,測定胴長さ19m)により風洞実験を実施し,表面風圧力の測定とその空間積分により,タワー各高さでの局部風力係数および基部風力係数を求めた。また,円錐状タンクに作用する風圧力および周辺流れの様子をより詳細に検討し,実験結果の理解を深めるために,汎用流体解析ソフト(Fluent 6.2)を用いた有限体積法に基づく3次元の流れの非定常数値解析も行った。乱流モデルは,SST k-wモデルである。風洞実験では,変動揚力のスペクトルから周期的な渦放出に対応するピークが検出され,円錐タンクの同一部分の抗力にも同じ周波数域にピークが認められた。局部抗力,および局部揚力の高さ方向の相関の検討からは,円錐部分の局部揚力のルートコヒーレンスに変動揚力スペクトルのピークに対応するはピークが存在し,その周波数での相関が高くなっていること,あるいは円錐状部分では高周波数側で高い相関が認められるなど,多くの知見が得られた。数値解析で得られた平均風圧係数は,タンクの背面ではやや不整合が見られたが,円錐タンク部分の背面で大きな変動風力係数が認められ,円錐部背後の変動流速の大きさに対応することが分かった。
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