研究概要 |
本研究では、都市域水環境における重金属の動態を毒性発現形態に着目して定量的に把握することを目的とする。今年度は特に、生物に取り込まれやすい自由イオン態の重金属の動態について、下水処理プロセス、都市河川を対象として調査を行った。 1.下水処理場の晴天時調査 晴天時における下水処理場内での重金属類の動態を評価した。下水処理過程の5箇所(流入水、初沈越流水、活性汚泥処理水、砂ろ過水、高度処理水)に、DGT (Diffusion gradient in thin-films)を浸漬させ、生物毒性の高い自由イオン態重金属類(Ni, Cu, Zn, Pb)の分析を行った。その結果、Niは初沈と高度処理において大きく減少したのに対して、CuとPbは、初沈において一時的に濃度が増加した後、漸減する傾向を示した。また、Znについては、処理過程において濃度変化がほとんどないという特徴を示した。 2.雨天時調査 DGTを設置可能でかつ都市域の雨天時排水を受容している都市河川を選定し、処理場の調査と同様の手法で、晴天時及び雨天時における自由イオン態重金属類の濃度変化を計測した。調査は2回行い、それぞれ15日間、9日間のサンプリングを行った。河川水に浸漬させたDGTは、2日に1度回収して分析を行った。Cuについては、自由イオン態の画分は検出されなかったのに対し、全溶存態Niの30-70%、全溶存態Znの20-90%は自由イオン態であることが判明した。降雨と重金属類の動態との関係については、明瞭な関係は見出せなかった。
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