ABC型(非対称型)トリブロック共重合体をB、Cに選択的な溶媒に溶解すると、Aをコア、Bをシェル、Cをコロナとするミセルを形成することが知られている。例えば、ポリ(スチレン-b-2-ビニルピリジン-b-エチレンオキシド)(略称:PS-b-PVP-b-PEO)を水に溶解すると、PSをコア、PVPをシェル、PEOをコロナとするミセルを形成する。このミセルのPVPブロックに金属化合物陰イオンを結合させた後、還元あるいは適当な化学処理によってナノメーターサイズの金属層を形成させる。これを焼結あるいは有機溶媒で高分子を除去し、中空金属微粒子が得る。本研究は、(i)このようなコア-シェル-コロナ型高分子ミセルを鋳型とする新しい中空金属微粒子の合成法を確立すること、(ii)その中空微粒子の種々の応用を検討することを目的とした。 本年度は陽イオン性ABC型トリブロック共重合体ミセルの調製とそれを鋳型とする中空金微粒子の合成を行った。 【1】高分子ミセルの調製 PS-b-PVP-b-PEOをジメチルフォルムアミド(DMF)に溶かした後、透析法によって溶媒を段階的に水に置き換えて高分子ミセル(直径:約95ナノメートル)を得た。 【2】中空金微粒子の合成と特性解析 前記の高分子ミセル水溶液にpH5以下でAuCl_4^-イオンを加え、PVP層に静電結合させた。これをNaBH_4で還元した後、凍結乾燥し、窒素雰囲気下で焼結して中空金微粒子を得た。得られた中空金微粒子を透過型電子顕微鏡測定で測定したところ、収率が極めて悪かった。今後はその原因を解明し、収率を上げる予定である。
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