光によってDNAから蛋白質への発現をコントロールする、センサータンパク質の代表であるAppAと呼ばれる光合成細菌の持つタンパク質の光化学反応を、時間分解で調べ、拡散係数が時間変化するという新しい現象を見出した。この結果を元に、ダイマー化反応が起こっていることとその形成速度を決定することに成功している。更に、光センサーの代表的なタンパク質である、PYPというタンパク質について、その構造変化の詳細を明らかにするために、幾つかの変異体を用いた時間分解熱力学量測定を行った。特に、N末端を数残基から23残基欠損したPYPについて、時間分解熱容量測定を行い、この部分を欠損することによって、野生型で見られていた大きな熱容量増加が見られなくなるという顕著な変化を見出した。このことは、野生型での反応中問体における熱容盤増加の分子論的要因が、疎水性相互作用によるものであることを示しており、またN末端のヘリックス構造が、反応中間体で崩壊していると言う描像がよく適用できる事が分かった。さらに、初期中間体において大きな構造揺らぎの増加を見出した。こうした揺らぎが、それに続く構造変化を誘起している原因と考えられる。これは、発色団からN末端への情報伝達が、構造揺らぎを介して起こると言うスキームが妥当である事を示唆しており、この分野への大きな貢献となった。この成果も、国際誌に報告する予定で、現在結果をまとめている最中である。
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