研究概要 |
近年開発された原子移動ラジカル重合法(ATRP法)を用いて,まず末端に臭素を有するPMMAおよびPEOのマクロイニシエーターを合成した。続いて,液晶形成能を有するアゾベンゼンメタクリレートおよびシアノビフェニルメタクリレートを重合することで,色々なジブロックおよびトリブロック共重合体の合成に成功した。全てのブロック共重合体は、狭い分子量分布を示すことが明らかとなった。PEOを有するジブロックおよびトリブロック共重合体ではスメクチック相が発現するのに対して,PMMAの共重合体はネマチック相を示すことがわかった。 ブロック共重合体ではミクロ相分離構造が形成されるが,その制御は容易ではない。本研究では,液晶の配向技術として最も実用的なラビング処理を用いて,ミクロ相分離構造の配向制御を試みた。ポリイミド配向膜を塗布したガラス基板を機械的に擦ることでラビング処理を行い,この基板上にブロック共重合体のクロロホルムor THF溶液をスピンゴートし,フィルムを作製した。原子間力顕微鏡で観察した結果,フィルム全面にわたってラビング方向と平行方向ナノシリンダーが配列していることが明らかとなった。すなわち,ラビング処理によってミクロ相分離構造を精密に配向制御できることがわかった。本研究内容は、Advanced Materials(材料分野で最高の国際誌)で発表し,インナーカバーとして選ばれた。 一方,ミクロ相分離構造の制御方法として外部刺激に光を用いることができれば,ラビング処理などの機械的作業を行うことなく、より高度な配向制御が可能となる。フィルムに,アゾベンゼンのトランス-シス-トランス光異性化を誘起できるアルゴンイオンレーザーの波長488nmの直線偏光を照射したところ,偏光方向と垂直方向へシリンダーが配向することが明らかとなった。
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