本年度は、IP3レセプターに結合する新規蛋白質IRBITの生理機能解明を中心に研究を行った。IRBITはIP3レセプターのIP3結合領域にIP3と競合的に結合するが、これには、IRBITがリン酸化されていることが必要である。また、IP3と競合的に結合することから、細胞内でIP3濃度が低い時(非刺激時)には、IP3レセプターに結合しており、一度IP3濃度が上昇すると(刺激時)IP3によりIRBITがIP3レセプターから遊離されることが想像される。従って、IRBITの機能としては、非刺激時(IP3レセプターと結合した状態)と刺激時(IP3レセプターから遊離した状態)との2つの相で考える必要がある。 刺激時の機能解明のために、IRBITのIP3から「遊離された後」の標的蛋白質を見つけるため、FLAGタグを付した。IRBITをHEK293細胞に発現し、FLAG抗体によって免沈した産物中にS-adenosylhomocysteine hydrolas (SAHH)を発見した。そこで、IRBITとSAHHとの結合を確認するために、SAHH cDNAをクローニングし、IRBIとSAHHとを培養細胞に共発現・免疫沈降実験によって確認した。また、IRBITとSAHHとの結合は、IRBIT-SAHH間で相同性のあるC端領域を介してなされること、そして、IRBITとSAHHとはhetero-multimerを形成しうることを明らかにした。 現在、IRBITがSAHHとmultimerを形成しした時に、SAHHの酵素活性をどう調節するのか?SAHHの細胞内局在にどういう影響を与えるのか?等について検討している。
|