本年度は、主として下記に挙げる研究成果があがった 1.超微小溶液チャンバー中における制限酵素反応の1分子計測:外部電界に対して透過性のある素材(アクリルアミド)を用いた超微小溶液チャンバーを作成し、その中で1分子のDNAを制限酵素と反応させて切断し、その後外部電界を印加することで切断されたDNA断片長を計測するシステムの開発に成功した(Lab on Chip 2007)。ここでは、制限酵素が反応する高塩濃度でも外部電界によってDNAを引き延ばすために、高分子ポリマーを用い、最適な電界強度と周波数の検討も行った。その結果95%の伸長効率でDNAを引き延ばすことに成功した。 2.超微小溶液チャンバー中におけるDNA複製反応の1分子計測:上記と同様の超微小溶液チャンバーを用いてLAMP(loop mediated isothermal amplification)法による1分子DNA増幅に成功した(Biomedical Microdevices in press)。確率的に各チャンバーに0ないしは1分子の鋳型DNA分子を閉じ込め、基板上にパターンしたマイクロヒーターで反応溶液と一緒に約65度で1時間保温した。その結果、増幅したDNAのパターンがポアソン分布することが確認された。これは、最初に鋳型DNAを閉じ込めたときに予想されるポアソン分布と一致しており、増幅されたDNAが一分子の鋳型DNA分子に由来することを意味する。以上の結果、1分子由来のDNA増幅が可能となり、きわめて微量な試料からのDNA診断が可能となった。
|