研究概要 |
我々の研究室では、ヒトの性決定遺伝子SRYに次いで、脊椎動物で二番目となるメダカの性決定遺伝子(DMY)を同定した。このDMYは精巣分化に先駆けてXYメダカ生殖腺の体細胞(セルトリ細胞)で発現を開始する。従って、このDMYの機能を解析するためにはメダカのセルトリ細胞の細胞株を確立する必要がある。そこで本年度は、メダカの精巣からセルトリ細胞を分離し、それらの細胞を用いてセルトリ細胞細胞株を確立することを試みたとともに、メダカの精巣の体細胞に発現し、DMYの転写因子の候補として考えられるgata遺伝子のクローニングを行い、生殖腺での発現パターンを解析した。 1)メダカ精巣から得られた体細胞(セルトリ細胞)を細胞培養することにより、12種類の細胞コロニーを得て、さらに、これらのコロニーを継代培養(12代)して数種の細胞株を得ることができた。これらの細胞株の各々について各種遺伝子(sox9t, DMRT1,3β-HSD, gata4,gata6)の発現(PT-PCR)の有無、及びalkaline phosphatase活性、phagocytosis活性を検定した。その結果、得られた細胞株の全ては、gata4、gata6、3β-HSDを発現するとともに、alkaline phosphatase活性とphagocytosis活性を示した。これらの細胞のうち、セルトリ細胞の特異的遺伝子マーカーであるsox9tとDMRT1の発現を欠く細胞をライディッヒ細胞株とした。現在、これら2つの遺伝子を発現する細胞株とセルトリ細胞との関連を詳しく解析している。 2)精巣の体細胞(セルトリ細胞)分化に関わると推察される2種のgata遺伝子をメダカの精巣からクローニングした。gata4は397、gata6は406のアミノ酸をコードする遺伝子である。いずれの遺伝子もRT-PCRでは精巣に発現は認められたが、in situ hybridizationでは、消化管での発現はみられたが、生殖腺にはシグナルは認められなかった。従って、メダカの精巣では、gata遺伝子は発現するものの、発現量は少ないものと推察された。
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