マンゴスチンの単為生殖(アポミクシス)によって形成された種子の特異性を明確にすることを目的として、まず、完全種子および発芽した種子をFAAで固定し、その種子断面を実体顕微鏡で観察した。また、完全種子については、固定後、パラフィンに包埋し、回転式ミクロトームを用いて10μmの連続切片を作製し、サフラニンおよびファーストグリーンで染色後に光学顕微鏡で観察した。その結果、マンゴスチンのアポミクシスによって形成されている種子には明確な胚が見られないことを確認した。ただ、種子内には形成層がリング状に観察され、形成層によって内層と外層に隔てられ、種子発芽・発根時のsootおよびinitial rootの両器官はこの内層が肥大した部位から形成されていることが明らかとなった。 次に、マンゴスチン種子の特異性をより明確にするために、マンゴスチンの成熟種子を9種子ずつ2等分、4等分および6等分し、それぞれの分割種子片を7%寒天培地に試験管内で置床した後、30℃、暗黒条件下で育成し、3〜4日間隔でそれぞれの種子片からの発芽・発根を調査した。その結果、2等分、4等分および6等分した種子のいくつかは、分割した全ての種子片から発芽あるいは発根することが示された。また、2分割した場合には、一方からshoot、残りの種子片からはinitial rootがまず形成され、種子中に極性があることが示唆された。種子片の発芽率は2等分種子で88.9%、4等分種子で77.8%と高い値を示したが、6等分種子では57.4%とやや低い値を示した。 以上の結果より、マンゴスチンの成熟種子には胚が存在せず、また、種子を分割した場合でもそれぞれの種子片が個体発生能力を有することが明らかとなった。今後、このような特性がどのような原因によって生じているのかをさらに詳細に検討していく予定である。
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