研究課題
魚類の卵は最終成熟の際に吸水し、急速に大型化する。ウナギは産卵が行なわれる海水中で、不足する傾向にある水を飲水によって補う。飲み込まれた海水は脱塩を受けながら腸まで達し、腸後部で体内に取り込まれるが、腸管の末端に位置する直腸は水吸収において重要な部位と考えられる。そこで本研究では、ウナギ直腸における水吸収機構の解明を試みた。まず、海水ウナギの血液と直腸液を採取し、浸透圧を測定したところ、両者には正の相関が認められ、直腸液の浸透圧は血液よりも約10mOsm低い値を示した。次に淡水、海水に馴致したウナギから腸および直腸を取り出し、内圧が3kPaになるように平衡塩類溶液(BSS)を封入した。作製した腸サックおよび直腸サックをBSS中で培養し、その重量変化を調べた。その結果、腸および直腸における水透過量は時間とともに増加したが、水透過量は海水ウナギの方が淡水ウナギよりも有意に高かった。また海水ウナギの直腸における水吸収の駆動力を調べるため、人工直腸液(ARF:300,310,320mOsm)を満たした直腸サックをBSS (310 mOsm)中で培養し、その重量変化を調べたところ、水吸収は300 mOsmで最も高かった。さらに、直腸サックをNa/K-ATPaseの阻害剤であるウワバインを加えたBSS中で培養した結果、ウワバインが直腸の水吸収を濃度依存的に阻害することが示された。以上の結果より、直腸ではNa/K-ATPaseの働きによりイオンが能動的に吸収されるとともに、低下した浸透圧によって水が体内側に吸収されることが明らかとなった。
すべて 2005
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Zoological Science 22
ページ: 675-680