研究課題
多発性硬化症(MS)は中枢神経系に慢性炎症性脱髄をきたす自己免疫疾患である。これまでに行われたMS及びその動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を用いた研究のほとんどがCD4陽性T細胞に焦点が当てられている。しかし、組織化学的にはCD8陽性T細胞の炎症部位への浸潤も明らかであり、CD8陽性T細胞が病態形成に何らかの役割を果たしていると考えられる。そこで、本研究では、EAEにおけるCD8陽性T細胞の動態を末梢と中枢神経系で解析することを目的として研究をおこなった。方法はEAEマウスから誘導時期ごとに脾臓及び脳と脊髄から単核球を分離し、4日間ミエリン髄鞘タンパク刺激後に単離したCD4及びCD8陽性T細胞からRNAを抽出し、リアルタイムPCRによりEAEに関連すると考えられているサイトカイン及びサイトカインレセプターの遺伝子発現量を解析した。IFN-γはCD4陽性T細胞では発症初期に最も誘導されるが、CD8陽性T細胞では臨床スコアのピークで最も強く誘導された。これらの結果は、CD4陽性T細胞はEAEの発症初期に、CD8陽性T細胞は後期において重要な役割を果たすことを示唆した。CD4陽性T細胞によるIL-17の発現パターンはIFN-γと同じ発現パターンを示しており、IL-17もEAEの発症に重要な役割を果たすことが示唆された。また、脾臓において、IL-23RはCD4陽性T細胞において誘導されるが、CD8陽性T細胞では誘導されなかった。この結果はIL-23RがEAEにおいてIL-17の誘導に関与することを示唆している。IL-12Rb1とIL-12Rb2は両T細胞によって中枢神経系において発症後に誘導されるので、これらの受容体はEAEの発症に関与する可能性が示唆された。これらの結果により、CD8陽性T細胞もEAEにおいて重要な役割を果たすことが明らかとなり、これからのMSの治療に関してはCD8陽性T細胞の働きも考慮する必要性を示した。
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