我々の研究室では拍動型の電気油圧型人工心臓や補助心臓を開発しており、弁としてはmonoleafletのMedtronic Hall弁を使用してきた。しかし、最近臨床ではbileaflet弁が主に使用されており、中心流や動力学の点においてmonoleaflet弁に関する優位性が明らかとされた。そこで、今回3種類のbileaflet弁について現在開発中の電気油圧型人工心臓システムへの応用の可能性についてキャビテーションの観点から検討した。 直径21mmのSt.Jude弁、ATS弁とSorin Bicarbon弁を電気油圧型人工心臓に用いて僧帽弁の位置に装着し、心拍数60-100bpmで駆動した。CCDレーザ変位センサを用いて弁の閉鎖運動を検討し、圧力センサを用いて弁表面近傍での圧力低下計測し、高速度カメラにてキャビテーション気泡を撮影した。また、キャビテーション気泡の観察時間を機械弁でのキャビテーション定量化の指標として使用した。 心拍数が増加するほど弁の閉鎖速度も増加していた。また、弁の閉鎖速度はATS弁で最も速く、Sorin Bicarbon弁で最も遅くなっていた。キャビテーション気泡はleaflet弁の閉鎖速度が最も速くなるleafletの円周で集中的に観察され、閉鎖速度が最も速いATS弁でキャビテーション気泡が多く観察された。弁の閉鎖速度が速いほどキャビテーション気泡の観察時間が長くなっており、これらには相関関係が存在していた。 本研究では、キャビテーション気泡の崩壊までの時間と弁の閉鎖速度には相関関係があることから、キャビテーション気泡の観察時間で機械弁のキャビテーションの定量化の検討が可能であると考えられた。Bileaflet弁においてキャビテーション気泡の原因としてはmonoleaflet弁と同様にsqueeze flowが考えられ、閉鎖速度が遅いbileaflet弁は電気油圧型人工心臓にも使用可能であると考えられる。
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