研究課題/領域番号 |
05F05605
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
河野 公俊 独立行政法人理化学研究所, 河野低温物理研究室, 主任研究員
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研究分担者 |
KONSTATINOV Denis Alekseyevich 独立行政法人理化学研究所, 河野低温物理研究室, 外国人特別研究員
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キーワード | ヘリウム液面電子 / 2次元電子系 / 量子ビット / 量子計算 / 量子状態遷移 / デコヒーレンス / ミリ波分光 |
研究概要 |
ヘリウム液面上で電子の位置を1電子単位で制御し、またミリ波励起によってその量子状態を制御することにより、量子ビットを作成することが原理的に可能である。電子の量子状態を観測することは、量子計算結果の読み出しを行うことにあたり、単一電子の量子状態制御と状態観測は大きな実用可能性をもっているとともに、量子力学の基礎に関わる重要な基礎科学の課題でもある。これらの技術要素がいずれも、実現可能であることは、ほぼ明白であるが、実験的実証は今後の大きな課題である。本研究計画では、これらの課題のうち、ミリ波励起による表面励起状態への遷移を制御することと、励起状態からの選択的なイオン化による、電子状態観測の基礎を理解することを目的として、ミリ波照射下での表面電子の3次元空間への逸出現象について調べる。 今年度は液体^3He表面上2次元電子系に130GHzミリ波を照射し、表面基底状態から、励起状態への遷移にともなうミリ波吸収を観測する、共鳴吸収の測定を行った。130GHzという高周波電磁波を希釈冷凍機温度で扱う、特殊な測定手法を手探り状態からスタートし、共鳴吸収線形の振る舞いを、温度、ミリ波振幅、電子密度などの関数として系統的に測定できるところまで到達している。吸収線形は、いわゆる、Fano線形と呼ばれる非対称な線形で説明されることが分かり、その線形解析から求めた減衰係数は、ヘリウム蒸気による電子散乱が主要な温度域では、過去の測定および理論予測とよく一致することがわかったが、さらに低温領域では複雑な線形を示し、その理解が単純でないことがわかった。この点を解明し、逸出率測定を行うことが来年度の目標である。
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