研究概要 |
これまで難しいとされていた、ナノサイズ球状BaCeO_3粉末,Ba(Ce_<0.8>Y_<0.2>)O_3粉末,およびBa(Ce_<0.8>Sm_<0.2>)O_3粉末の合成に取り組み、得られた粉末のナノサイズにおける形状や粒径が、焼結特性に与える影響を精査した。本研究において、炭酸塩共沈法により得られたナノサイズ粒子は、平均粒径40nm程度の粒径を有する分散性の良い粉末であり、通常1600℃程度で緻密化する、こうした組成の試料を、1250℃程度の温度で、ほぼ理論密度まで高密度化することができた。 こうして得られたナノ粉末を用いて、焼結温度を1200℃から1450℃まで変化させることで、高密度焼結体中の粒径を400nmから1100nmまで変化させて、導電率の粒径依存性を検討した。その結果、焼結体の平均粒径700nm付近において導電率の最大値が観察された。 こうした特異的な導電率の粒径依存性は、これまで十分にその理由が理解されていなかった現象であり、BaCeO_3系固体電解質中における導電特性に与えるナノ構造の影響の明確化が必要である。本年度における実験により、先に述べた導電率が最大になる現象を確認したので、来年度は、主として微細構造観察に重点をおいた検討を行う予定でいる。微細構造観察においては、高分解能電子顕微鏡を用いる原子像の観察に加えて、高性能分析電子顕微鏡を用いて、原子レベルにおける組成変動の解析を進める。こうした注意深い解析はこれまで十分に行われておらず、本研究により、微細構造と特性の間に潜むつながりが明らかになるものと期待される。
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