研究概要 |
次世代マイクロ燃料電池用固体電解質として、注目されているプロトン伝導体BaCeO3系化合物を対象に、ナノサイズの粒径を有するナノセラミックス中に現れるといわれている、高速プロトン拡散現象をバルク固体の中で精査し、この現象を最大化させる(プロトン伝導度を最大化させる)ために必要なナノ構造の特徴について検討することを目的にした。 ナノサイズ球状BaCeO_3粉末,Ba(Ce_<0.8>Y_<0.2>)O_3粉末及びBa(Ce_<0.8>Sm_<0.2>)O_3粉末の合成に取り組み、900℃において、分散性の高いペロブスカイト単一相からなる分散性の高いナノ球状粉末の合成に成功し、その焼結挙動を注意深く観察し、最適な焼結方法を提案することにより、従来の高密度化に必要であるとされていた1500℃よりも、300℃以上低い、1100から1200℃において理論密度の95%以上に緻密化した焼結体の作製に成功した。 焼結温度をかえて、緻密焼結体を作成することで、平均粒径400nmから1ミクロン(1000nm)の緻密焼結体を作成し、300℃から600℃における直流の導電率を測定したところ、平均粒径700nm付近に極大値が確認された。この傾向の妥当性を確認するべく、湿潤環境中のおける導電率測定を行ったところ、導電率の増大は確認されたが、導電率の焼結体中の平均粒径依存性は、まったく同じく平均粒径700nm付近に極大値をもつ傾向が確認された。 今回の検討では、ナノ領域において現れることが期待された、特有の大きな導電率の向上は、作製したバルク体の中では確認できなかった。 ナノ領域において大きな導電率の向上が確認される組成と今回の研究であつかった組成のバルク体中の微細構造を精査することで、ナノ構造と導電率の関係が明らかにされるものと期待される。
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