研究概要 |
平成17年度は分子状酸素を利用した選択酸化反応に高い活性を示す担持Au触媒に関して、(1)in-situ UV, XAFSを用いて活性サイトの電子状態、局所構造の解析を行うとともに、(2)新規選択酸化反応用触媒と反応プロセスの探索を行った。 (1)水素と酸素を用いたプロピレンの選択酸化によるプロピレンオキシド合成反応に関しては、メソ孔構造をもつチタノシリケートに金を担持した触媒が有効であることが見い出されてきているが、その要因の一つは、Au粒子上で水素と酸素から生成した過酸化物がチタン上にスピルオーバーしプロピレンと反応することであると考えられているが、実際反応条件下でこのような中間種の生成を捕らえた例はなかった。そこで、本研究において反応条件下でのin-situ UVおよびXAFSを用いて解析したところ、UVではTi-OOHに帰属させる吸収とTi(IV)の6配位構造に帰属される吸収の増大が見られ、さらに、同条件でのXAFSにより4配位構造に帰属されるプリエッジピークの減少、過酸化物の配位したTiに帰属されるピークの増大が見られたことから、反応条件下でのTiへの過酸化物の配位が確認された。これは、選択酸化反応条件下で過酸化物の配位したTiを直接観察した初めての例であり、反応機構解明のための重要な知見を与えるものである。 (2)さらに、分子状酸素を有効利用した新規の選択酸化反応として、プロパンの選択酸化について検討した。その結果、チタニア系酸化物にAuを担持した触媒がプロパンの選択酸化に安定した高い活性を示すことを見出した。しかも、既存の担持V系触媒を用いたプロパンの選択酸化反応では通常500℃近い高温で反応させることが必要であるのに対し、本研究で開発した触媒は200℃以下の低温で効率よく反応を進行させることが可能であり、新しい選択酸化反応プロセス構築の可能性が見出されたものと考えられる。
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