ICMの最初の運命決定機構を調節する分子を明らかにするため、前年度までに試験管内解析システムを利用してES細胞からExEへの分化の動態学的研究の広域な分子解析を実行した。この解析によってGATA6調節や、ExE誘導に関与している可能性のある30の候補遺伝子を確認した。 今年度は、まず最初に試験管内でのスクリーニングを行い、有効な4つの候補遺伝子を選択した。同定された遺伝子はまだ完全には立証されていないが、PDGF経路に関与している可能性があり、ExE誘導はこのシグナル経路の未解明の新たな機能として考えることができる。 次に、試験管内システムで確認された候補遺伝子の機能が人工的なものでないことを裏付けるため、これらを生体内で検証することを試みた。 まずin-situ hybridizationによって初期発生段階のこれらの遺伝子の発現を解析し、また細胞機能をよりよく理解するためにGATA6やNanogとの発現の共局在化を探してみた。 これら生体外でのアプローチと並行して、野生型桑実胚とマーキングされたKDミュータントES細胞を合わせて妊娠中の代理母マウスに移植し、ノックダウン細胞には生体内でExE系列を誘導する能力がないことを明らかにした。 また同時に、生体内での発生初期段階に酷似させた受精卵にsiRNAを微量注入するという方法を用いて、生体内において遺伝子の発現を阻害してみた。この結果として、ExE欠損が確認されたことから、候補遺伝子が分化のマスター遺伝子であることが確認された。 最終的にこの解析を完了するためには、絞り込んだ候補遺伝子に対する変異マウスが必要であるため、これらのマウスを作成している。
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