研究課題
1 アカマツの水平樹脂道の形成過程細胞間隙の一つである水平樹脂道に着目し、アカマツを用いて師部、形成層帯、木部について連続板目切片によって形成過程を追跡した。形成層帯においては、水平樹脂道は観察されないが、分化が進んだ師部及び木部では、細胞間隙として水平樹脂道が形成されていた。形成中の樹脂道の直径は分化の進行とともに一様に拡大するのではなく、拡大と縮小を繰り返していることが明らかになった。2 樹脂鋳型法による細胞間隙ネットワークの解析木材中の細胞間隙に樹脂を含浸、固化し、木部を溶解除去することによって材中の空隙の樹脂鋳型を作製する方法を用いて、放射柔細胞と軸方向要素間の細胞間隙のネットワーク構造を立体的に観察した。放射組織と軸方向要素が接触交差する部分においては、細胞間隙ネットワークは格子状のネットワーク構造を示した。この格子状ネットワーク構造は、細胞間隙に向けて開口した放射柔細胞の盲壁孔を通じて柔細胞とも連絡していた。通常、辺材の放射柔細胞は原形質を有し、心材化にあたって心材成分の分泌を行うことから、このような格子状の細胞間隙ネットワークが心材物質の移動経路として機能していると考えられた。さらに、放射組織端部の柔細胞は、隣接する道管との間に特異的に大きな壁孔対をもつことが明らかとなり、この壁孔対も物質の移動経路の一つであると考えられた。3 環境変化に対する樹木の生理的応答熱帯産アカシアマンギウムを人工気象室で育成し、環境変化として水、温度、光量をそれぞれ低下させるストレスを与え、その時の応答を解析した。温度ストレスを受けた個体は、貯蔵デンプン粒の増加やリビングウッドファイバー(原形質をもつ繊維)の形成が観察され、心材形成が誘導された。また、水ストレスを与えた個体では、道管が小径化するという応答が観察できたが、光ストレスを受けた個体では顕著な応答はみられなかった。
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