研究概要 |
中国江西省の徳興斑岩銅鉱床周辺の地質・年代・岩石化学・物理探査データを収集した.同鉱床近辺にある鉛山多金属鉱床の鉱化年代をセリサイトを用いたk-Ar法により測定した.これらのデータにより,徳興鉱床は中間応力場から圧縮応力場に変化する過程で鉱化作用が生じたことを解析した. 以前に採取した岩石・鉱石試料をもとに,薄片,研磨薄片,両面研磨片を作成し,偏光顕微鏡観察を行い,構成鉱物の同定を行った.鉱石中の石英脈については両面研磨片をもとに東北大学においてカソードルミネッセンス法を用いた観察を行い,単一の石英脈中に複数の石英形成期が存在することを確認した.鉱床中の硫化鉱物28試料の硫黄同位体測定を行い,-0.1〜+5‰の硫黄同位体組成を持つことが明らかになった.X線回折装置を用いて変質鉱物を同定し,フィリック変質帯には白雲母とセラドナイトが卓越し,低温度の変質帯には方解石及び含マンガン方解石の2種が存在することが明らかとなった.含水変質鉱物5試料を用いて酸素・水素同位体組成の測定を行い,白雲母の酸素同位体組成は7.1〜8.9‰,水素同位体組成は-87〜-71‰の結果を得た.これらの値から白雲母を形成した熱水は,「マグマ水」であることが推定された.方解石,含マンガン方解石7試料の炭素・酸素同位体組成を測定し,炭素同位体組成は-6.2〜5.0‰と変化しないのに対し,酸素同位体組成は9.4〜18.8‰と大きく変化することが明らかになった.斑岩銅鉱床の母岩の斑岩の主成分,微量成分,希土類成分の全岩化学組成分析と87Sr/86Sr,143Nd/144Nd同位体組成の分析を行った.予定していた徳興鉱床のモリブデナイトのRe-Os年代測定は,他の研究者により実施・報告されたため実施しなかった.流体包有物の顕微鏡観察により,この鉱床では,二相流体包有物が卓越することが判明した.流体包有物の均質化温度・塩濃度測定は,来年度早々に実施する.来年度7月に神戸で開催される国際鉱物学連合大会に2件の講演要旨を投稿し,受理された.
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