シリル基の高い電子供与能を利用した高活性な遷移金属錯体触媒を開発するため、一価もしくは三価の9族遷移金属錯体用に、一価のアニオン型新規シリル配位子の創製を試みた。シリル配位子を安定な支持配位子とするため、中心にシリル基を配置し、さらに2点の中性ドナー原子を炭素鎖アームを介して配置することにより、3点のキレート配位が可能な配位子をターゲットとした。中性ドナー原子としてリン原子を、シリル基とリン原子を結ぶ炭素鎖アーム長を2乃至3(アルキレン鎖もしくはフェニレン)とする三種類の新規配位子を設計し、合成を検討した。 シリル基とリン原子を結ぶ炭素鎖がアルキレン鎖の配位子に関しては、ビニルシランあるいはアリルシランに対し、リン原子団を導入する反応をキーステップとする合成ルートを検討した。ラジカル反応やイオン的な反応によるリン原子団の導入を検討したが、適切な反応条件を見出すには至っておらず、現在検討を継続している。一方、シリル基とリン原子を結ぶ炭素鎖がフェニレン基である配位子に関しては、ジアルキルホスフィノ基を有するアリールリチウムとクロロシランとの反応をキーステップとする合成ルートを検討した。中間体であるジアルキルホスフィノ基を有する臭化アリールは既知の方法で合成可能であり、リチオ化を経た後、クロロシランと反応させることにより、目的とする配位子前駆体であるヒドロシランを高収率で得ることに成功した。現在、反応のスケールアップを検討している。
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