研究概要 |
近年,国際調達の深化に伴い,国内製造業はこれまでにない厳しいコスト及び品質競争にさらされている.このような背景で仕上げ加工を必要としない精密鍛造法は今後益々重要な工法になると思われ,その金型寿命を抜本的に向上させる技術が望まれている.本研究は精密鍛造用金型の長寿命化を実現するための金型最適設計法の構築を目的とし,今年度は以下の各項目について検討を加えた. 1.金型疲労破壊の実態調査 線材の冷間鍛造加工に供した金型の疲労破壊のプロセスを明らかにするために,加工回数に伴う金型損傷の進展を観察し,寿命に至った金型の疲労破面におけるき裂の起点位置,各種切断面におけるき裂の進展挙動を詳細に調べ,巨視破壊に至ったプロセスの実態を明らかにした.き裂は表面の微視脱落部を起点とし,微視脱落部の合体によって進展することが確認された. 2.金型焼付き現象の実態調査 上記き裂の起点となる表面の微視脱落部の生成に重大な影響を及ぼす金型への焼付き現象について,精密鍛造の一種である角筒深絞り-板鍛造を対象に検討を加えた結果,以下のことがわかった. (1)金型表面への焼付きは金型の直辺部と曲辺部との境界付近の下端面付近にて発生し,加工回数の増加に伴い上方へ成長する. (2)無被覆金型のセミドライ加工では,わずか数回の加工で金型表面に明らかな焼付き痕が発生するが,TiCあるいはDLC被覆した金型では,1000回の加工でも顕著な焼付きは認められない. 3.金型疲労破壊の支配因子の抽出 観測された疲労起点における各種力学的因子,き裂の進展方向の必然性を判別できる因子を金型破壊の支配因子として抽出するため,鍛造加工における金型の応力解析を行った。き裂起点周辺の引張応力とせん断応力が大きく、観測結果と一致する解析結果が得られている。
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