研究課題
本研究は糖鎖の伸長・分解を触媒する糖質関連酵素についてX線結晶構造解析により反応機構・基質特異性の構造基盤を獲得し、タンパク質工学的手法を用いた有用オリゴ糖合成への応用を目的としている。糖加水分解酵素ファミリーGH-94に属するCellvibrio gilvus由来セロビオース(Glc-β1,4-Glc)ホスホリラーゼ(CgCBP)はGH-94酵素中最も詳細な解析が行われてきた酵素であり、セロビオースや分岐三糖など有用オリゴ糖合成への応用が考案されている。CgCBPの構造解析を行い、グルコース・硫酸複合体構造を2.0Å、グルコース・グリセロール・リン酸複合体構造を2.1Å分解能で明らかにした。CgCBPは構造既知のGH-94 Vibrio proteolyticus由来キトビオース(GlcNAc-β1,4-GlcNAc)ホスホリラーゼと同様の立体構造を有していたが、それぞれの基質であるセロビオース、キトビオースを認識する残基に明確な差が見られた。またCgCBP構造を鋳型とした他のGH-94酵素のモデル構造との比較により、CgCBPの基質特異性、反応特異性に関与するアミノ酸残基を特定した。これらの知見を基に新規なオリゴ糖合成能の獲得と触媒能向上を目指した変異体の作成を行っている。また新規な糖質関連酵素ラクト-N-ビオース(Gal-β1,3-GlcNAc)ホスホリラーゼ(LNBP)の構造決定を目指して、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium bifidumを由来とするLNBPの結晶化を行った。結晶化条件の探索の結果、数条件でLNBPの結晶が得られたが、構造決定に十分な質のX線回折像を得ることはできなかった。現在更なる結晶化条件の探索を試みている。
すべて 2005
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The Japanese Society of Applied Glycoscience 52・2
ページ: 191-196