研究課題
屠場由来の未成熟卵子を用いたブタ胚体外生産は、汎用性の高い技術として一般に認知されているものの、その効率は未だ低率に留まっている。その原因の一つとして体外での卵子成熟の不備が指摘されており、卵子成熟培養法の新たなる展開が強く求められている。マイクロチップを利用してブタ卵子の体外成熟を行う場合、微小培養環境に適合した卵成熟機構を制御することが重要である。卵丘細胞卵子複合体(COC)は、ゴナドトロピン(GTH)刺激を受けることで2nd messengerであるcAMPが上昇し、分化・成熟が誘導される。また、COCの主要な物質輸送チャンネルであるGap junctional communication(GJC)の消長にもGTHの関与が報告されている。そこで、本年度はマイクロチップ内での効率的なブタ胚体外生産技術開発のモデル実験の一環として、cAMP分解酵素であるphosphodiesterase(PDE)の抑制が成熟培養時のブタCOCに及ぼす影響についてまずマクロ環境において解析した。FSHまたはPDE阻害剤(IBMX)を添加した10%ウシ胎仔血清を含むM199中でCOCを20時間培養し、培養期間のCOCにおけるGJC、cAMP濃度およびLH受容体発現を検証した。【結果】FSH区のCOCにおけるGJCは培養に伴い速やかに低下したが、IBMX区ではFSH区と比較してGJCの低下は緩やかであり、その差は有意だった。また、FSH、IBMX区共に無添加区と比較してCOC中のcAMP濃度は有意に増加し、その上昇はFSH区においてより顕著であった。さらに、FSH、IBMX両区において、無添加区と比較してLH受容体発現が有意に増加した。以上より、ブタCOCのPDEを抑制することで成熟培養中のGJCが持続し、さらにFSHによる刺激無しにLH受容体発現が誘導されることが明らかになり、従来法に変わる新たなブタ卵子の体外成熟方法の可能性を示した(Molecular Reproduction and Developmentに掲載決定)。本研究成果は、マイクロチップを利用してブタ卵子の体外成熟培養を行う場合の基盤的な知見になる。
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