「顕著な内部構造を有する複雑液体における非平衡現象および相転移ダイナミクス」という表記研究課題のもとに極めて多岐にわたる対象について、新奇な非平衡物性、相転移ダイナミクスの研究を行った。 1.流動下の粘弾性相分離現象流動について詳細な計算機実験的研究を行った。特にミセル溶液におけるシアバンド現象に関して、ストレス-拡散結合がバンド界面の安定性を破り、複雑な動的定常状態をもたらすことを示した。これは、近年注目されているレオカオスと呼ばれる現象の要因となりうると考える。 2.電流に駆動される、コルビノ円盤状の(第2種超伝導体)渦糸格子系では、動径方向の非一様なローレンツ力に起因して、興味深い電流-電圧曲線が発生することが知られていた。この現象の可能なメカニズムを探るべく、フレンケル-コントロヴァモデルを発展させ、現象論的な解析を展開した。本研究では以下のような予測を得る。(i)臨界電流以下では剛体的な回転運動が実現される。(ii)臨界電流以上では、渦糸格子の分裂、塑性変形が生じる。この結果として得られる電流-電圧曲線も含めて、本研究で提案した現象論モデルは実験を定性的によく再現することが分かった。 上記の研究以外にも、超臨界流体における対流現象や固体の塑性変形に関して、主に数値的に研究を行い、その成果は海外の学術雑誌に掲載済みである。また、せん断流下の液体の不安定化現象、ネマチック液晶中のイオンの運動、過冷却液体中のマイクロレオロジーに関しても研究を行い、論文投稿中、あるいは投稿準備中の段階である。
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