研究概要 |
開環メタセシス重合による目的のポリマーを得るため、モノマー1の合成を種々検討した。その結果、3-phenyl-2-propyn-1-al (2)を出発原料として以下に示す9段階のステップを経て目的のモノマーを得た。まず、2とpropargylzincとのカップリング、続くiodobenzeneとのsonogashiraカップリング反応により1,6-diphenylhexa-1,5-diyn-3-ol (3)を合成した。3のヒドロキシル基をtrimethylsilyl基で保護した後にジルコニウムを用いた1ポットでの酸化的環化-ブロモ化、脱保護により、2,3-Bis(bromobenzylidene)-cyclobutan-1-ol (4)を合成した。ヒドロキシル基をtriethylsilyl基で保護し、ハロゲン-リチウム交換によって発生させたジリチオブタジエンとdimethyldichlorosilaneとの反応、続く脱保護により2,4-diphenyl-3-sila-bicyclo[3,2,0]hepta-1,4-dien-7-ol (5)を得た。最後に5のヒドロキシル基をブロモ化し、DBUによる脱臭化水素を行い、2,4-diphenyl-3-sila-bicyclo[3,2,0]hepta-1,4,6-triene (1)を合成した。この方法は原料の2およびsonogashiraカップリング反応時において2,4-位のアリール基を種々変えることが可能である。そのため、重合後シロールユニットの2,5-位に様々な置換基を有するポリマーを合成でき、官能基の調整による多様な機能発現が期待できる。次にこのモノマーを用いて、開環メタセシス重合を検討した。開環メタセシス重合に有効とされているGrubbs触媒では複雑な混合物を与えるのみであった。今後は、モリブデンschrock錯体や新規ルテニウムアルキリデン錯体を検討することにより効率の良い開環メタセシス重合を検討する予定である。 また、得られた知見をもとにシロール以外のヘテロ環、すなわちチオフェンおよびボスホールについて検討した。現在、(1)と同様の方法で2,4-diphenyl-thia-bicyclo[3,2,0]hepta-1,4,6-triene (6)、2,4-diphenyl-3-phospha-bicyclo[3,2,0]hepta-1,4,6-triene (7)の前駆体である7-bromo-2,4-diphenyl-3-thia-bicyclo[3,2,0]hepta-1,4-diene (8)および7-bromo-2,4-diphenyl-3-phospha-bicyclo[3,2,0]hepta-1,4-diene-3-sulfide (9)の合成を達成した。
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