昨年度末、CANGAROO-III大気チェレンコフ望遠鏡を用いたステレオ観測によって、ガンマ線パルサーPSR B1509-58/MSH15-52から広がったTeVガンマ線放射を検出した。放射が広がっていることから、TeVガンマ線源は点源であるパルサーからではなく、X線など多波長で存在が確認されているパルサー星雲であることを示唆する。近年、銀河系内のTeVガンマ線天体の多数派を占めるパルサー星雲は、宇宙線供給源候補として注目されている。MSH15-52での陽子起源TeVガンマ線放射モデルでは、パルサーのスピンダウンエネルギーでは十分なエネルギーが供給できないことを示した。また電波からTeVガンマ線に渡る多波長のデータを用いて電子起源モデルを検証し、説明可能なモデルパラメータ(磁場、'電子のべき、電子の最大エネルギー)を示した。これらをまとめてAstrophysical Journal誌に投稿し、受理された。また、博士論文では以上の内容に加えてパルサーの回転エネルギーからパルサー星雲からの放射へのエネルギー分配率を波長ごとに計算し、他の代表的なパルサー星雲であるかに星雲・帆座パルサー星雲と比較した。星雲の磁場の強さや周囲の超新星残骸との相互作用を反映した特徴が見られたが、統一的な傾向を見出すためにはさらにサンプルを増やして調査する必要性を指摘し、継続して調べている。
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