1.活動銀河核やX線連星のX線スペクトル中には、しばしば幅の拡がった蛍光鉄輝線が見られる。この鉄輝線は、ブラックホール降着円盤を何らかのX線源が照射することによって生成され、相対論的効果によってそのプロファイルが変形したと考えられているが、過去の研究ではX線源のモデルについては単純化されたものしか考えられることはなかった。我々はX線源として磁気リコネクションによって加熱された円盤コロナを考え、それに基づいて円盤上の鉄輝線強度分布を求め、遠方の観測者から輝線プロファイルがどのように見えるかを、相対論的効果をフルに取り入れて計算した。得られたプロファイルは過去の観測結果と極めてよく一致した。これはX線照射の物理モデルを取り入れて円盤からの反射スペクトルを計算した世界で初めての例である。 2.ガンマ線バーストの中心エンジンのモデルとしては、星程度のブラックホールに毎秒太陽質量程度のガスが落ち込む降着円盤といったものが有力視されている。このような円盤は非常に高密度かつ高温となるため、光子による冷却はほとんど効かず、代わりに移流やニュートリノ放射による冷却が卓越すると考えられる。我々はそのような円盤の構造を、ニュートリノ放射、電子・核子の縮退、原子核の解離、レプトン数保存といった物理をできるだけ詳細に取り入れて解きなおした。特に原子核の解離が起こる半径において円盤の不安定性を誘起するような物理量の急激な変化があるかどうかを調べたが、現在のところはそのような兆候は見出せていない。これについては今後も引き続き解析を進める予定である。
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