研究課題
平成17年度は、本研究課題である、高速多重極法の高速化ならびにその破壊力学への応用を図るため、基礎研究を行った。本年度の研究成果は大きく分けて次の3点である。・時間域動弾性学問題における高速多重極法についての基礎的研究・静弾性周期境界値問題への高速多重極法の適用・動的問題における周期境界値問題への高速多重極法の適用これらの各項目について説明する。(1)時間域問題における高速多重極法本研究課題である、高速多重極法の破壊力学への応用を図るためには、時間域問題における高速多重極法を開発することが有用である。なぜならば、破壊現象は大規模動的クラック進展問題としてモデル化できるからである。このような大規模破壊問題を解析するためには、時間ステップ数を大きく取り、長時間に渡る現象をシミュレートできることが肝要である。そこで本年度は、時間ステップ数に関する計算オーダーを低減した新しいアルゴリズムを提案し、数値解析によってその有効性を検証した。以上のような計算量を低減するための取り組みに加えて、フーリエ解析を利用した新たな定式化を行い、異方性弾性体の解析が可能な解法を提案した。数値解析については来年度以降に行い、結果を発表する予定である。(2)静弾性周期境界値問題における高速多重極法破壊現象の解析を行うにあたって、対象物の微視的構造(例えば結晶の向きなど)が問題となる場合があるため、微視的構造を有する物体の巨視的な拳動を知ることのできる解析ツールは極めて重要である。巨視的な挙動を知るための手法として均質化法が知られているが、均質化法を適用するためには、微視的周期構造において周期境界値問題を解く必要がある。そこで本年度は、静弾性周期境界値問題における高速多重極法の開発、ならびにその均質化法への適用を行った。具体的な数値解析対象としてカーボンナノチューブ複合材料を想定し、弾性体中に多数の剛体が周期的に包含されたモデルを扱った。数値解析の結果、複合材料の巨視的物性値は、従来から知られている経験式によく一致することが示された。(3)動的問題における周期境界値問題への高速多重極法の適用波動現象における周期境界値問題は、例えばフォトニック結晶におけるストップバンド現象やカメラのレンズ部分の解祈など、工学的には重要な問題となることが多い。しかしながら、高速多重極法を動的周期境界値問題に適用した例はほとんど見られない。そのような現状を鑑み、本年度は周波数域波動問題の周期境界値問題における高速多重極法に関する基礎的研究に取り組んだ。定式化ならびに、数値解析結果は18年度中に発表予定である。
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Proceedngs of the Conference on inverse Problems, Mulutiscale Analysis and Homogenization (Eds.H.Ammari and H.Kang) (To appear)
Boundary Element Analysis : Mathematical Aspects and Applications, Springer (To appear)
Computational Materials science Vol.34,No.2
ページ: 173-187
IWACOM2004 in international Journal for Multiscale Computational Engineering (accepted)