研究課題
毒性が高いスズ試薬に代わるラジカル剤として、当研究室で開発してきたインジウム-ハロゲン試薬を利用し、生物活性化合物合成への展開を志向したラジカル環化反応の開発を行った。本試薬は系中において、1価と3価のインジウム種が生成していると考えられ、その1電子還元能とルイス酸性を活かした反応開発を目指した。反応基質としてラジカル開始部にヨードベンゼン、ラジカル受容体部に3重結合を設定し環化反応の検討を行ったところ、3重結合の近傍にアミド基を導入することで環化によって生成する2重結合の立体が制御できることを見出した。これはベンゼンラジカルの3重結合への付加の後、生成したビニルインジウム中間体において、インジウムがアミド酸素に配位しているためだと考えられる。また本インジウム中間体はパラジウムクロスカップリング反応に利用することも可能であった。そこで次に本反応を骨格の3位にオレフィン構造を有するオキシインドール類の合成に対して適用した。本化合物は、オレフィン部の置換基と立体に応じて、興味深い生物活性を示すことが知られている他、プロテアーゼ阻害活性を有する天然化合物TMC-95Aの合成中間体でもあり、その立体選択的な合成法の確立は強く求められている。その結果、ハロアミド類に対して上記のインジウム試薬による5-exoラジカル環化およびカップリング反応を用いることで、骨格3位の1置換あるいは2置換のオレフィン構造を立体選択的に構築したオキシインドール類を合成することに成功した。またインジウム金属の触媒化を行うことはできなかったが、同化合物の有用性から信頼性の高い触媒的な合成法を確立を目指し、パラジウム触媒を用いた合成法の開発に成功した。
すべて 2005 2004
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