研究代表者は、ガングリオシドGM1(GM1)/スフィンゴミエリン(SM)/コレステロール(Chol)で構成されるラフト様リポソーム存在下無毒性のアミロイドβ蛋白質(Aβ)から形成される神経細胞毒性を示す毒性型Aの単離・同定を目指した検討を行っている。Aβの毒性は、NGFにより神経細胞様に分化させたPC12細胞を用い、Live Dead Viability/Cytotoxicity Kitによって行った。この系においてラフト様リポソーム自体が高濃度では神経細胞毒性を示したため、細胞投与前にAβとラフト様リポソームとを分離することを試みた。超遠心分離法では、Aβはラフト様リポソームと結合したまま共沈するため、分離することができなかった。そのためAβとラフト様リポソームとの結合を解消させた後、超遠心分離法によってAβを分離することを試みた。この方法では、等モルのGM1/SM/Cholで構成されたラフト様リポソームが存在する条件下で形成された可溶性Aβ凝集体を分離することに成功した。 Aβ凝集体はSDSにより単量体まで解離する性質を示したため、グルタルアルデヒドによって架橋した後、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行う方法を試みた。しかし、この架橋によって単量体のAβがアーティファクトのオリゴマーを形成するため、SDS-PAGE法はAβ凝集体の正当な生成量および分子量評価には不適当であると考えられる。一方、サイズ排除クロマトグラフフィーを用いてAβ凝集体の生成量および分子量評価を試みたところ、生理条件に近い溶液条件での評価に成功し、さらにAβ凝集体を分画・分取する系が確立できた。
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