研究概要 |
逆遺伝学的解析法であるRNA干渉(RNA interference)法を用いて,東アジアおよびヨーロッパにおいてマツに甚大な被害を与えているマツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophilus:以下ザイセンチュウ)を植物寄生性線虫のモデルとし,標的を狙い定めたきわめて特異性の高い殺線虫法の開発を目指している.まずは初期胚発生に必要な遺伝子をもとにした,機能解析をおこなっている.17年度は,クローニングした遺伝子4種類をもとにRNA干渉条件の確立を目指し,同時に発現解析をおこなった.Bx-tbbをもとに1.5kbp,500bp,100bpの二本鎖RNA,22bp程のsiRNAを合成し,ザイセンチュウにSoaking RNAをおこなった.さらに,RNAそのものに蛍光標識をしてSoaking効率の確認をおこなった.ザイセンチュウにはSystemic RNAi mechanismが備わっておらず,したがって腸からの二本鎖RNA吸収が起こらないのではないかということがわかった.大学構内より採取した,モデル生物である線虫Caenorhabditis elegans(以下エレガンス)と同じ自活性土壌線虫についても同様の結果であった.本申請研究により明らかとなった,エレガンスでも有効に働くザイセンチュウ遺伝子Bx-tbbを基に,パーティクルガン法をエレガンスに導入したところ,RNAiによる表現型を確認することができた.エレクトロポレーション法と併用しながらさらに条件設定をおこない,新しい手法の開発として報告する予定である.また,エボラ大学のManuel.M.Mota博士との共同により,ザイセンチュウ初期胚発生時における染色体の構造と行動についての解析を終え,Nematologyに受理された.
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