研究概要 |
逆遺伝学的解析法であるRNA干渉(RNA interference)法を用いて,日本を含む東アジアおよびヨーロッパにおいてマツに甚大な被害を与えているマツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophilus:以下,ザイセンチュウ)を植物寄生性線虫のモデルとし,標的を狙い定めたきわめて特異性の高い殺線虫法の開発を目指している.まずはモデル生物であり同じ線虫類のCaenorhabditis elegans(以下,エレガンス)と比較しながら,初期胚発生に必要な遺伝子の機能解析をおこなった. 初期胚発生に必要と考えられる遺伝子4種類(Bx-par-1,Bx-daf-21,Bx-inex-2,Bx-tbb-1)の全長,および運,動の際に生じる筋収縮に必要と考えられる遺伝子1種類(BX-unc-22)の部分断片をザイセンチュウゲノムおよびcDNAからクローニングした.Bx-par-1は2,901bpのコード配列(CDS)からなり,N末端にはSer/Thrキナーゼドメインをもつ.イントロンを含んだ場合,全長は5kbp以上となる.Bx-daf-21は2,127bpのCDSからなり,3つの短いイントロンを含む.分子量および熱処理により発現量があがることからもHSP90であることがわかった.これはエレガンスCe-daf-21の構造と非常に類似していることがわかった.Bx-daf-21およびBx-par-1遺伝子の上流やく3kbpおよび下流3'UTRをクローニングし,gfpレポーター融合遺伝子を作製した.作製した融合遺伝子をエレガンスに導入した結果,Bx-daf-21::gfpのばあい,頭部神経および腸での発現が観察できた.つまり,ザイセンチュウdaf-21遺伝子プロモーターの制御のもとでエレガンスでも発現することがわかった.作成したgfp融合遺伝子にはBx-daf-21の全長が含まれており,現在これが機能喪失変異体をレスキューすることができるかの確認,つまり発現するのみならず正常に機能しているかどうかを確認中である.
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