オトシブミ科は産卵の際に、単に産卵孔をあけるだけではなく、生きた植物の茎を切ったり傷つけたり、葉を巻いたりといった加工を行う。その加工は比較的単純なものから複雑なものまで多様である。こうした植物加工の進化に影響を与えたと考えられるひとつの要因が、寄生蜂による攻撃である。寄生蜂による寄生と、植物加工の関係を明らかにするために、チョッキリ類からオトシブミ類までの様々な分類群に属する13種を対象として、寄生蜂群集の比較をおこなった。その結果、加工が異なる種間では寄生蜂群集が大きく異なることが示された。特に、潜葉性の種では、葉を寄主植物から完全に切り落とし、地表で潜葉する場合では、幼虫寄生蜂からの攻撃を免れることがわかった。また、同じように寄主植物から切り離されて地表での幼虫期を過ごす場合でも、茎や葉柄食/潜葉性/葉を巻く種では、それぞれ寄生蜂群集は異なっており、植物の摂食部位や立体構造を変化させることで、攻撃を受ける寄生蜂の種類が変化することが示唆された。さらには、同じ葉巻でも、簡単な葉巻を作るチョッキリ類と、複雑な葉巻を作るオトシブミ類とでは寄生蜂群集の違いがみられ、複雑な揺籃に寄生する種は特殊な分類群であった。すなわち、葉巻の複雑化とともにスペシャリストとして共進化をとげた寄生蜂の存在が示唆され、植食者の寄主植物利用における進化を考える上で興味深い結果を得ている。また、寄生蜂群集の比較研究に加え、オトシブミ科の植物加工進化の道筋を明らかにするため、日本産の60種を対象として分子系統解析をおこなった。核とミトコンドリアの領域のそれぞれひとつずつについて塩基配列を決定し、分子系統樹を構築した。各クレードの支持がまだ低いため、今後さらに領域を増やして解析する必要があるが、大きな進化の道筋が明らかとなっている。
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