研究課題
本研究では森林の維持機構を生物間相互作用の観点から解明するモデルとしてヤブツバキの繁殖をめぐる生物間相互作用に注目し、その繁殖成功にどのような影響を与えるのかを検証した。噴火の影響程度が異なる調査地において、ヤブツバキの生育状況、種子生産状況、花粉媒介者の生息密度調査を行った。その結果、噴火の影響が強まるにつれ、生育状況、開花活動も縮小していることが明らかになった。また、花粉媒介者の生息密度はヤブツバキの開花状況が良いところほど高くなるこが明らかになった。そのため、開花密度の少ないところでは、ヤブツバキの受粉率も下がると考えられたが、実際は、開花数の少ないところで逆に受粉率が高くなっていた。しかしながら、未成熟果実の生存率は噴火の影響の強い調査地で低くなっており、最終的な果実の結果率は調査地間で有意な差はなくなった。次に、開花密度の違いが花粉流動にどのような影響を与えるかを検証するために、種子形成に寄与した花粉プールの遺伝的多様性と父性解析による花粉散布範囲を推定した。その結果、花粉散布距離、調査地外からの花粉流入率は開花密度が低くなるにっれて大きくなり、逆に、母樹間の花粉プールのAllelic richnessに基づいた遺伝的分化指数(Ast)は、開花密度が低くなるにつれて下がる傾向があった。さらに花粉媒介者(メジロ)の行動圏をラジオテレメトリー法により推定したところ、高被害地域で行動圏面積は広くなり、行動圏内の花粉親候補木の数も多くなった。以上の結果をまとめると、噴火という撹乱作用は、1)ヤブツバキ個体そのもの(着葉、開花個体密度、開花密度、果実の生存率)には負の影響を与えるものの、2)開花個体密度、開花密度の低下は鳥類による花粉媒介の効率を上昇させ、受粉率、花粉の散布距離や遺伝的多様性に正の影響を与える、という2点にまとめられた。
すべて 2007 2006
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Ecological Research (印刷中)
ページ: DOI10.1007/s, 11284-007-03, 45-4
Ecological Research 21・5
ページ: 732-740
森林科学 46
ページ: 24-27