研究概要 |
本研究目的である新規分子p57が神経細胞の極性を制御する分子メカニズムの解明について、今年度はp57の神経細胞における分子機能の解明を主な目的として研究を行った。 1,培養海馬神経細胞の極性形成におけるp57の機能解析 (1)RNAi法によるp57発現抑制時の培養海馬神経細胞の表現型解析を行った。その結果、p57の発現抑制により神経細胞に過剰軸索の形成が認められ、p57が神経細胞の軸索形成に対し抑制的に機能していることが示唆された。さらに、極性形成後の神経細胞においても、p57の機能阻害により過剰軸索の形成が認められたため、p57は神経細胞の極性の維持にも重要な機能を有している可能性が示唆された。 (2)培養海馬神経細胞おけるp57過剰発現時の表現型解析を行った。その結果、p57単独の過剰発現では、RNAi法による発現抑制の結果から予想される軸索形成不全や極性形成の遅延などの表現型は認められなかった。しかし、他の分子の過剰発現による過剰軸索の形成を抑制した。これらの結果から、p57は過剰な軸索の形成を抑制し、神経細胞の確実な極性の獲得ならびにその安定化に寄与している可能性が示唆された。また、予想される機能からp57をSingar (Single Axon Related)と名づけた。 2,Singarの神経極性形成・維持における分子作用機構の解明 Singarの神経細胞極性形成における分子作用機構を理解するため、これまでに知られている極性関連分子との関連を免疫沈降法により検討した。その結果、哺乳細胞内においてPI3-Kinaseの触媒サブユニットp110αおより調節サブユニットp85との共沈降が認められた。また、PI 3-Kinaseとの相互作用には、Singarのアミノ末端に存在するRUN domainを含む領域が必要であることを明らかにした。
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