本研究は南米ペルー北部のヘケテペケ川中流域を調査地とし、先史アンデス文明形成期(紀元前2500〜50年)におけるこの地域の社会動態を解明することと、それを通じて物質文化と社会との動態的な相互関係を明らかにすることを目的とする。 平成17年度までにペルー共和国カハマルカ県コントゥマサ郡ヨナン=テンブラデーラ村にてラス・ワカス遺跡をはじめとする形成期遺跡群を発掘調査してきたが、平成19年度は昨年度に引き続き、各遺跡から出土した土器の分析を現地にておこなった。また、日本にてラス・ワカス遺跡から得られた炭化物試料計5点を、放射性炭素年代測定法により年代測定した。結果、形成期各時期に対応する、整合性の高い絶対年代値が得られた。これと土器編年・建築編年をあわせることにより、ラス・ワカス遺跡とこの地域における形成期の社会変化について、より詳細に分析した。 また日本において、建築や地形を含めた景観を、コンピュータを用いたGIS(地理情報システム)の手法で分析し、空間利用の通時的変化について社会動態との関係から説明を試みた。具体的には、ヘケテペケ川中流域の地形と、ラス・ワカス遺跡および周辺諸遺跡の建築の測量データを統合した3次元モデルの作成を行い、さらにそれを用いて可視領域分析、流量分析をおこない、景観的要素および地形的要素から一帯の空間構造の社会性を解明した。 さらに以上の研究成果を総括し、博士論文を執筆した。
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