本研究は、精神障害者が地域で名前を明かして生活している知られる北海道浦河郡浦河町において、精神障害者の当事者グループである「浦河べてるの家」に対して地域住民がどのような態度を持っているのか、精神障害者と非障害者住民との相互の交流がどのような状態にあるのか、また国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所で行われる介入プロジェクトの経過に伴ってこれらが変化するのかどうかを明らかにする。 浦河べてるの家のグループホームの近隣住民に聞き取り調査を行い、介入プロジェクトが本格的に始まる前の段階での住民の様子を質的に明らかにした。調査手法は個別面接、集団面接(計14名)、インフォーマルな聞き取り調査、自治会の集会内での聞き取り調査を組み合わせた。 グループホームに住む人との関わりにおいて、表面化したトラブルはほとんどなく、挙げられたことはゴミの出し方、路上での喫煙、近所づきあいの下手さなど、精神障害故の問題行動や恐れというよりは、住民のマナー・慣習からはみ出す日常的な行為が指摘された。商業地区の住民は、浦河べてるの家が有名であることによる経済効果も言及した。例外として、過去に一度、共同住居から出荷した際に隣家から立ち退きを求められたというトラブルがあったが、これは延焼の可能性があるごく近隣の住民のみからの求めであった。一方、上記のような事象を不満として語った人であっても、個々のメンバーに対しては特技や好ましい点についても語った。 精神障害の当事者であることに対するラベリングは行われており、日常のルールからはみ出した場合には、実際のトラブルの内容以外の事柄も不満として表面化していると考えられた。同時に日常的な関わりのある個々の当時者に対してはラベリングを超えた個人への理解が形成されている様子が伺われた。 その他、障害者に対するスティグマ・態度に関する研究発表を国際学会、国内学会において行った。
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