分裂酵母における相同組換え反応のメカニズムと新規タンパク質であるSfr1/Swi5の相同組換え機構における役割をin vitroで解明するために、17年度はまず組換え反応に必要な分裂酵母由来のタンパク質の大量精製を行った。相同組換え反応の中心的な役割を担うRad51タンパク質は、大腸菌での発現系では活性が認められなかったので、バキュロウィルスの発現系を用いて精製した結果、活性のあるRad51の精製に成功した。さらに、Sfr1/Swi5と、一重鎖DNA結合タンパク質であり三つのサブユニットからなるRPAはそれぞれ複合体として発現、精製の方法を確立し獲得した。 次に、組換え反応をin vitroでアッセイする基本的なDNA基質を調整し、Rad51とDNAのモル比、pH、塩濃度等、DNA鎖交換反応の条件を検討した。その結果、分裂酵母のRad51としては世界で初めて分裂酵母由来のRPA存在下での長いDNA基質を用いたDNA鎖交換反応に成功し基本的なアッセイ系を確立した。この交換反応は、岩崎研で先に同定した新規タンパク質であるSfr1/Swi5に依存していた。Sfr1/Swi5は、Rad51の1/10の量でRad51の反応に対する最大の効果を示し、濃度が高くなると逆に阻害効果もみられた。この反応は、ATPとRPAにも完全に依存しており、Sfr1/Swi5は、Rad51のATPase活性を上昇させた。また電子顕微鏡の観察では、一重鎖DNA上に形成されたRad51のフィラメントはRPAによって崩壊されるが、Sfr1/Swi5があるとフィラメントが安定に存在することが分かった。これらのことから、Sfr1/Swi5がRad51のフィラメントの安定化と活性化に寄与していることが明らかになった。 さらにSfr1/Swi5の基本的な性質として、Swi5単独には、DNA結合能、Rad51との相互作用はないが、Sfr1/Swi5の複合体には一重鎖DNAと二重鎖DNAに対する結合能およびRad51との相互作用が確認された。Sfr1のN末端側3/5の長さを欠いた変異体を作成したところ、Sfr1はSwi5と複合体を形成したままであったが、DNAに対する結合能が欠落し、Rad51に対する相互作用も大きく低下した、このことからDNA結合能およびRad51の相互作用はSfr1側に存在することが示唆された。
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