脊髄小脳変性症の原因遺伝子はいくつか知られている。最近、一部の患者でPKCγに点突然変異があることが原因になっていると報告された。患者は運動失調や認知低下の症状を示す。変異の同定がごく最近であることから、発症解明の研究は全く進んでいない。 本研究では、PKCの機能異常による神経変性疾患発症メカニズムの解明を目指している。 まず、変異PKCγ由来の精髄小脳変性症のモデルマウス作成のため、変異PKCγ-GFPを発現する遺伝子操作動物を作製している。 具体的には 1、ノックインベクターの作成 2、ES細胞へのトランスフェクションと相同組替えES細胞の獲得 3、キメラマウスの作成 4、ヘテロマウス作成 現時点では2、相同組み換えES細胞の獲得に難航している段階である。 ところでPKCγ変異由来の脊髄小脳変性症の患者から異なったアミノ酸に変異がはいっていることが次々に報告されている。PKCγへの変異箇所は10以上報告されている。これまで1分子解析を用いていくつかの変異由来のPKCγの細胞膜上での滞在時間が短くなっていることを確認していたが、今回新たに報告された変異体についても同様な解析をおこなった。PKCγの脂質結合部位に点変異が入っているものは、これまでの結果と同様に細胞膜上の滞在期間が短くなる傾向をもっていた。一方、キナーゼドメインに変異が入っているものは変化がみられなかった。以上のことから神経変性症の発症がPKCγの活性化と何らかの関与があると考えられた。
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