研究課題
本課題では、構造生物学の新しい展開として、高圧NMR法を用いて基底状態を逸脱した準安定状態の蛋白質構造研究を行った。圧力は、部分モル体積差を通して状態間の化学平衡に作用するため、一般に部分モル体積の小さな準安定構造を安定化できる。圧力を用いたNMR法は、常圧下では分布率が少なく捉えることが困難な準安定構造を高分解能で解析する優れた方法である。昨年度までに、ユビキチン構造に含まれる2つの準安定構造と、ユビキチン及びユビキチン様蛋白質(NEDD8、SUMO-2)に共通に保存された準安定構造を発見した。本年度は、Ufm1、Atg-8など他のユビキチン様蛋白質について研究展開を行なった。圧力実験に対して高い可逆性を示したユビキチン様蛋白質について解析を行うと、いずれもユビキチンに類似の準安定構造が発見された。これによりユビキチン様蛋白質に共通に保存された準安定構造の存在が確かなものになった。この準安定構造は、関連酵素との相互作用部位を含む部分で局所変性した構造をしており、分子認識機構における関連性が示唆できる。この仮説、すなわち準安定構造が高活性構造であることを示すために、異なる安定性を持つ変異体を作製し、準安定構造の分布率と活性を比較する実験を計画した。これまでに、局所変性部位に高く保存されているPro-ProをAla-Ala置換したユビキチン変異体を作製し、高圧NMR法により準安定構造の存在と分布率を決定した。
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Biochemistry 47
ページ: 30-39
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