研究概要 |
大對は学校適応を「個人の行動と学校環境とのポジティブな相互作用」と定義し、学校適応に関する先行研究から得られた知見をまとめ、「学校適応アセスメントのための三水準モデル」を構築した(大対・大竹・松見,印刷中)。三水準モデルでは、水準1として子どもの個人的行動特徴、水準2として子どもの行動の学校環境における機能性、水準3として子どもの主観的学校適応感という三つの水準から学校適応をアセスメントすることを提案している。このように複数の水準からアセスメントを行う理由は、学校適応が子どもの行動特徴のみによって決定されるものではなく、その行動へ環境からどのような働きかけがあるかという行動と環境との相互作用から決定されるものであると考えているからである。本年度は特に幼児期から小学校入学への移行に伴う適応について、水準1と水準2に焦点をあてた行動アセスメントを実施した。 幼児期は社会性に関わる行動面、感情面、認知面の発達が著しい時期であり、その個人差も大きいことが分かっている(大対・松見,印刷中)。まず幼児に認知発達および社会性発達のアセスメントを実施し、その中から年齢相応の発達段階よりも発達が遅い子どもを「スクールレディネス低児」として選定した。これらの幼児を小学校入学後に追跡し、レディネス低児と同じ学級の仲間との相互作用について行動観察を行った。レディネス低児1名と仲間6名の7名からなるグループを作り、そのグループで1つのおもちゃを使って遊んでいる様子をビデオカメラで記録した。結果、レディネスの低い子どもは仲間との遊び場面において社会的に不適切な働きかけが多いことが明らかになった。しかし、そのような子どもでも仲間からの効果的な声かけや援助があれば、適応的に遊ぶことができることも示唆される結果が得られた。本研究は、日本行動分析学会第24回大会およびAssociation for Behavior Analysisの第32回会議でポスター発表をした。
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