研究課題
前年度までの実績において、本研究課題である「光誘起ドーピング法」の基礎的な知見を得ることができた。その中で有機半導体のキャリア密度制御には、不純物分子と母材である有機半導体間において電荷移動現象が生じる必要があることがわかり、さらにその電荷移動現象を光によって促進することができるところまで報告した。本年度はそのようなキャリア密度制御を行った素子の最適化を目的に研究を進めた。本研究で対象とした有機半導体素子は、電界効果トランジスタとした。電界効果トランジスタはゲート、ソース、ドレインの三つの電極を持つ素子であり、ゲート電極に印加する電界を制御することで信号を増幅する。このときの活性層に有機材料を用いるのが一般に有機トランジスタと呼ばれている。トランジスタの特性は、活性層に用いた半導体のキャリア密度に強く依存するため、本研究課題で着目している光誘起ドーピング現象によって与えられるキャリアが素子特性に大きく影響することが期待できる。しかしながら、有機トランジスタは、界面の特性に支配されているために半導体のキャリア密度制御だけでは素子特性を支配することができなかった。このために、本年度は有機トランジスタの界面の評価と制御に関して重点的に研究を行った。研究開始当初から有機トランジスタの評価に用いてきた変位電流法は、ドーピング時の素子の挙動を観測すると共に各バイアス時のキャリアの挙動を観測することができた。これを用いて、我々は電極金属と有機材料の界面の特性評価を行い、さらに絶縁膜界面のキャリアトラップの観察を行った。それらの研究の結果、有機トランジスタを流れる電荷は電極からの注入によることがわかり、ドーピングによって与えられる空間電荷は閾値の制御に用いることができることがわかった。
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