研究概要 |
DNA中の一塩基多型の新たな検出方法として、所属研究グループでは脱塩基部位(AP site)含有DNAプローブと蛍光性小分子リガンドを併用する検出法を提案している。 本年度は、疎水場蛍光プローブであるDBD(7-N, N-Dimethylaminosulfonylbenzo-2-oxa-1,3-diazole)をAMND(2-Amino-7-methyl-1,8-naphthyridine)に導入したリガンドを新規に開発した。このリガンドとAP site含有DNA二重鎖との相互作用を評価したところ、ターゲット塩基がシトシン、チミンの場合にDBDが著しい蛍光発光応答を示した。またこれにピリミジン塩基に対して蛍光消光応答を示すAMND部位の応答を組み合わせ、蛍光強度に応じた擬似カラー表示による蛍光レシオ検出を行ったところ、ピリミジン塩基とプリン塩基の明瞭な視覚的判別が可能であった。 このDBDの発蛍光応答は、DBD部位周辺の疎水性の増加によるものと考えられる。すなわち、ターゲット塩基がピリミジン塩基の場合には、AMND部位がAP site内で塩基を認識するのに伴い、DBD部位がDNA二重鎖の疎水場である副溝に位置するという仕組みである。そこで、DBDの蛍光ストークスシフトの変化からLippert-Matagaの式等を利用してこの場合のリガンドのDBD部位周辺の誘電率を調べた結果、副溝に位置していることを示唆する値を示した。さらに、DNA二重鎖に比べて副溝の疎水性が低いDNA-RNA二重鎖にこのリガンドを適用したところ、DBDの発光応答は減少し、DBD部位が副溝側に位置していることを示す結果を得た。 また、表面プラズモン共鳴を利用する検出法について、最適な測定条件を検討し、PCR産物に対する検出への応用を行った。その結果、107merDNA中の一塩基変異の明瞭な検出を達成した。
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