研究概要 |
主要な抗原提示細胞である樹状細胞は、Toll様受容体の刺激を介してIL-12を産生する。IL-12はナイーブT細胞をTh1細胞に誘導する重要なサイトカインであるが、その産生過剰は、宿主にとって不利な免疫応答を引き起こすことから、その抑制系機構が近年注目されている。脂肪酸結合タンパク(Fatty Acid Binding Protein : FABP)ファミリーは、脂肪酸の細胞内キャリアーとしてその細胞作用を制御すると考えられている。本研究期間では、免疫組織化学法を用いて、樹状細胞に発現する表皮型FABP(E-FABP)を同定し、E-FABP分子の遺伝子欠損マウスの樹状細胞における表現型を解析することにより、FABP分子の免疫制御因子としての可能性を示した。 結果、1)脾臓と同様に樹状細胞が存在する成熟期マウス末梢リンパ節皮質の傍皮質部と濾胞、骨髄由来の樹状細胞にE-FABPが発現していること、2)FABPのリガンドである長鎖不飽和脂肪酸の存在下では、脾臓樹状細胞においてLPS刺激後のIL-12産生が抑制されること、3)E-FABPマウス由来の欠損樹状細胞では、LPS刺激後のIL-12p70産生が著明に亢進し、IL-12p70を構成するIL-12p35の発現が野生型に比べて亢進していること、4)IL-12p35のmRNA転写を制御するp38MAPキナーゼのリン酸化が、E-FABPマウス由来の欠損樹状細胞で亢進していること(Kitanaka. et al,投稿中)、が明らかにされた。すなわち、樹状細胞においてE-FABPはその細胞内リガンドである長鎖不飽和脂肪酸のIL-12産生抑制機構に、p38MAPキナーゼカスケードの制御を介して関与していることが示された。
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