研究課題
近年、都市・地球温暖化問題の解明や燃焼器の極限環境下に耐え得る設計などにおいて、ふく射伝熱の重要性が日増しに高まっている。しかしながら、これらの大規模複雑系におけるふく射伝熱現象には未解明な問題が多く残っており、数値シミュレーション技術もいまだ確立されているとは言い難い。すなわち、現実的問題としてふく射だけでは無く、高温場の乱流現象、相変化、化学反応等が複雑に相互作用するような系においては、ふく射伝熱シミュレーションにかかる計算負荷がボトルネックとなっている。本研究の目的は、メガスケールでは都市環境や地球環境、マクロスケールでは高温燃焼器などといった大規模複雑系におけるふく射伝熱現象を解明し、数値シミュレーション技術および計測技術を確立していくことである。現在までに我々の研究グループが独自に開発してきた「光線放射モデルによるふく射要素法(REM2:Radiation Element Method by Ray Emission Model)」は、独創的な数値解析理論により複雑三次元形状物体のシミュレーションを高速・高精度に行うことができ、これらの大規模複雑系に対して適用できる可能性が高まってきた。そこで本研究では、REM2をさらに発展させたふく射計算アルゴリズムである「離散方位ふく射要素法(DOREM : Discrete Ordinates Radiation Element Method)」を提案した。本計算法は、従来のふく射要素法と比較して、高精度に解析することが可能なだけでなく、約80倍の計算速度かつ、記憶容量を最大で約1/800カットすることが可能となった。したがって、本手法を用いることにより、大規模な系に対して、熱対流や乱流燃焼などとカップリングすることも可能となり、本研究ではふく射計算アルゴリズムの開発に加え、その応用研究として高温場における乱流現象を精度良く予測可能なLarge Eddy Simulationと組み合わせることによって、乱流場におけるふく射伝熱の重要性についての知見を得ることが出来た。
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