近年、都市部においてもNATMなどの山岳トンネル工法によるトンネルの構築が数多く見られるようになった。輻湊化が進む都市部においては既設構造物との近接施工も数多く見られ、切羽面の安定性を保つことは重要な課題と言える。低土被り、未固結地山など地盤条件が悪い場合は、安全なトンネル構築を行うために切羽面を補助工法により補強して掘削することがしばしば行われる。そこで、本研究ではX線CT装置を用い、各種補助工法の効果について検討を行った。その結果、トンネル切羽面を補強する鏡ボルト工法に大きな地山変状抑制効果があることが確認された。また、鏡ボルトの打設パターンについて考察を行った結果、鏡ボルトの打設ピッチを小さくすることにより切羽前方に拡がる崩壊領域のすべり幅が小さくなり、これにより切羽の安定性が確保されることが確認できた。 またこれと同時に、ボルト材の補強メカニズムをより詳細に解明するために一面せん断試験を用い検討を行った。CTスキャナ内で供試体のせん断、CT撮影を行うには、X線の透過能力、CTスキャナに搭載するせん断装置のサイズなど、様々な考慮すべき制約条件が生まれる。そこで、X線CT室内で一面せん断試験が実施可能なX線CT専用一面せん断試験装置を開発した。 X線CTスキャナに搭載可能な一面せん断装置を開発した。まず、開発した装置の有用性を確認するために、補強していない土で一面せん断試験を実施し、地盤中のせん断帯を可視化することに成功した。さらに、ボルト材により補強された土の一面せん断挙動を可視化し、そのメカニズムについて考察を行った。開発した装置には、土槽境界面での摩擦の影響など改善すべき問題点がいくつかある。今後は装置を改良することによりこれら問題点を解決し、ボルト材と地盤の相互作用を定量的に評価し、より効果的な地盤の補強法について検討する。
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