ヒトCD8^+T細胞の機能や分化・成熟過程は依然として不明な点が多い。本年度は、細胞傷害活性を有するエフェクターCD8^+T細胞に焦点を当て、その機能的多様性と分化・成熟過程を解析することを目的とし、研究を行った。 健常人由来の末梢血単核球をマルチカラーフローサイトメトリー法にて、3つのエフェクター分子Perforin(Per)、Granzyme A(GraA)、Granzyme B(GraB)および、T細胞分化マーカーの発現を解析したところ、ヒトCD8^+T細胞は5つの異なるエフェクター分子を発現する集団で構成され、ヒトCD8^+T細胞がPer^-GraA^-GraB^-→Per^-GraA^+GraB^-→Per^<low>GraA^+GraB^-→Per^<low>GraA^+GraB^+→Per^<high>GraA^+GraB^+と分化・成熟してゆくことが示唆された。さらに、EBVおよびHCMV特異的CD8^+T細胞のエフェクター分子の発現様式と細胞傷害活性の違いから、Per^<high>GraA^+GraB^+のCD27^-CD28^-フェノタイプを示すCD8^+T細胞が、エフェクター細胞集団であることが示された。炎症性サイトカインIL-8は、生体内でCD8^+T細胞の機能に大きな影響を与えていると考えられるが、IL-8の受容体であるCXCR1のCD8^+T細胞上での発現を解析したところ、Per^+のCXCR1^+CD8^+T細胞はエフェクターサブセットの過半数を占め、IL-8に対して遊走能を示した。さらに、エフェクターサブセット中のCXCR1^-細胞は活性化するとTNF-α、IFN-γ、IL-2を産生し、IL-2非存在下においても自己増殖能を示した。反対にCXCR1^+細胞はIL-2のみ産生が見られず、IL-2非存在下においては増殖能を示さなかった。 これらのことから、CXCR1^+CD8^+T細胞はもっとも分化・成熟の進んだターミナルエフェクター細胞であり、単一であると考えられていたエフェクターCD8^+T細胞が機能的に多様な細胞によって構成されていることが示唆された。
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