研究概要 |
レム唾眠中の急速眼球運動は夢見の発生に関連があると考えられている。本年度は急速眼球運動を手がかりとして,夢見の発生機構を検討することとした。本年度は次の2点を明らかにした。 (1)Abe et al.(2004)はレム睡眠中の急速眼球運動に先行して緩徐陰性脳電位が出現することを発見した。本年度は急速眼球運動の発生に関与して生じる脳活動を明らかにすることを目的として,この脳電位の再現性を確認するとともに,緩徐陰性脳電位の発生源を推定した。実験参加者22名(女性11名,男性11名,20-25歳)の通常終夜睡眠から睡眠ポリグラフを記録した。脳電位を急速眼球運動の開始点にそろえて,眼球運動前200msから後50msの脳電位を加算平均した。その結果,急速眼球運動前には前頭前部優勢に陰性電位が出現していた。sLORETA(Pascua1-Marqui,2002)を用いて,陰性電位の発生源を検討した結果,情動や感情に関与すると考えられている内側前頭回,眼窩回,前帯状回,島,鈎などに電流源が推定された。このことから,REM睡眠中の急速眼球運動に先行して,情動に関係する脳活動が生じていることが示唆された。 (2)前年度に急速眼球運動とガンマ帯域脳波活動の関連性を明らかにした結果を,国際誌てSLEEP)に投稿し,現在審査中である。ガンマ帯域脳波は認知課1題など,脳の活動性が高い状態のときに出現する。REM睡眠中にはNREM睡眠(睡眠段階4,2)と比較して,ガンマ帯域脳波の振幅が増大すること,急速眼球運動前と比較して,急速眼球運動後にガンマ帯域脳波の振幅が増大することが明らかとなった。急速眼球運動後には急速眼球運動前と比較して脳の活動性が高まっていることが推測される。 来年度は急速限球運動に伴う脳活動から夢見の発生機構モデルを構築するとともに,レム睡眠と夢見の機能仮説を提案する予定である。
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